Network Analyst のライセンスで利用可能。
ネットワーク属性は、ネットワーク エレメントのプロパティで、ネットワーク上を通過できるかを制御します。属性の例としては、指定した距離の道路を移動する時間、どの道路でどの種類の車両が規制されるか、指定した道路を走行する速度、どの道路が一方通行かなどがあります。
ネットワーク属性には、「名前」、「使用タイプ」、「単位」、「データ タイプ」、「デフォルトとして使用」という 5 つの基本プロパティが用意されています。さらに、エレメントの値を定義する割り当てのセットも持ちます。
- 使用タイプは、Cost (コスト)、Descriptor (記述子)、Restriction (規制)、Hierarchy (階層) のいずれかで、解析時に属性をどのように使用するかを定義します。
- コスト属性の単位は、距離または時間の単位です (たとえば、センチメートル、メートル、マイル、分、秒)。
Descriptor (記述子)、Hierarchy (階層)、Restriction (規制) の単位は識別されません。
- データ タイプは、Boolen (ブール)、Integer (整数)、Float (浮動小数点)、Double (倍精度) のいずれかです。
コスト属性はブールのデータ タイプを持てません。規制のデータ タイプは常にブールで、階層のデータ タイプは常に整数です。
- [デフォルトとして使用] は、これらの属性を、新規に作成したネットワーク解析レイヤーに自動的に設定します。
デフォルトで使用されるようにコスト、規制、または階層の属性を設定すると、ネットワーク データセット上で作成されたネットワーク解析レイヤーがその属性を自動的に使用するように設定されます。ネットワーク データセット内のコスト属性は 1 つしか、デフォルトで使用されるように設定できません。記述子属性はデフォルトで使用できません。
ネットワーク属性は、[新規ネットワーク データセット] ウィザード (新規ネットワークの定義時) または [ネットワーク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスの [属性] タブで作成します。ネットワーク属性を作成するには、まず、属性名、使用タイプ、単位、データ タイプを定義します。次に、ネットワーク データセットの構築時にネットワーク属性の値を提供する、各データ ソースのエバリュエーターを割り当てます。これを行うには、属性を選択し、[エバリュエーター] をクリックします。
ネットワーク属性はエバリュエーターで使用可能なパラメーターを保有することもできます。トラックの車高/重量、天候要因、または現在の速度などの特性をモデリングすることにより、パラメーターを使用したネットワーク属性での動的な解析が可能になります。規制属性には、常に [規制の使用法] というパラメーターがあります。
コスト
移動時間 (道路上を移動する時間) や要求 (道路で収集するゴミの量) などのインピーダンスを計測およびモデリングするには、特定の属性を使用します。これらの属性は、エッジに沿って割り当てることができます。つまり、エッジの長さに沿って比例分割することができます。たとえば、移動時間をコスト属性としてモデリングした場合、エッジの半分の通過は、エッジ全体の通過の半分の時間となります。エッジの通過に要する時間が 3 分間であれば、エッジ半分の通過に要する時間は 1.5 分間となります。このエッジに沿って 1.5 分間分のルートが必要な場合は、エッジ フィーチャの最初の半分からルート フィーチャが作成されます。
ネットワーク解析では、経路の計算 (最適ルートの検索) 時に、多くの場合はコスト (インピーダンス) の最小化が求められます。一般的な例としては、最速ルートの検索 (移動時間の最小化) や、最短ルートの検索 (距離の最小化) があります。移動時間 (運転時間、歩行時間) と距離 (メートル) もネットワーク データセットのコスト属性です。
記述子
記述子は、ネットワークまたはそのエレメントの特性を説明します。コストとは異なり、記述子は割り当てできません。つまり、この属性の値は、エッジ エレメントの長さには依存しません。たとえば、道路網の記述子には、車線数などがあります。道路網の記述子には、規制速度もあります。これはコスト属性ではないので、インピーダンスとしては使用できませんが、距離と組み合わせることでコスト属性 (たとえば、移動時間) を作成し、インピーダンスとして使用することができます。
規制
解析中に、規制を適用したエレメントの通過を完全に禁止するか、回避するか、あるいは逆に優先するように、特定のエレメントに規制を関連付けることができます。
解析時にチェックボックスを使用して、規制をオンまたはオフにすることができます。さらに、規制をオンにしても、解析時に入力した値が特定の基準を満たしたときのみ、エレメントを実際に規制することもできます。これにより、たとえば、現在ルート解析中の車両が特定の重量を超えている場合は、重量規制をオンにして、車両の重量を入力してから解析を実行します。Network Analyst では、重量制限を超える道路を除外して最適なルートが検索されます。
すべての場合において、規制属性はブール型のデータ タイプを使用して定義します。つまり、各ネットワーク エレメントに規制があるか (ブール値の評価が True)、規制がないか (ブール値の評価が False) です。[規制の使用法] パラメーターは、すべての規制属性に自動的に追加されますが、必要であればさらにパラメーターを追加することができます。ArcGIS for Desktop では、[規制の使用法] パラメーターを次の 7 つの値のいずれかに設定できます。
- 禁止
- 回避: 高
- 回避: 中
- 回避: 低
- 優先: 低
- 優先: 中
- 優先: 高
このパラメーターに割り当てた値によって、規制属性が関連付けられているネットワーク エレメントが禁止されるか、回避されるか、優先されるかが決まります。さらに、ネットワーク エレメントが回避または優先されるレベルを、高、中、低のいずれかを選択して指定できます。以下の 3 つのサブセクションでは、一般的な規制の使用法を紹介します。
ネットワーク エレメントの禁止
最も一般的な規制の使用法は通過の禁止です。たとえば、規制属性を適用して一方通行の道路をモデリングできます。この場合、一方の端から他方の端への通過は可能ですが、逆方向の通過はできません。同様に、歩道に対する規制属性では、通過を完全に禁止することができます。歩道として識別されたネットワーク エレメントは、動力付き車両に対して生成されるすべてのルートから除外されます。
ネットワーク エレメントの回避
特定のネットワーク エレメント上の通過を禁止する代わりに、禁止制限を一部緩和して、通過の回避が不可能であるか、コストがかかりすぎる場合を除いて、解析でエレメントの通過を回避することができます。たとえば、商用配送車両のルート解析で、私道の走行を回避したい場合は、規制属性を使用して、[規制の使用法] パラメーターを [回避] に設定します。これにより、ほとんどの場合は私道が回避されます。ただし、私道での配送が発生した場合は、その目的地に到達するルートを生成できます。また、ストップに向かう途中で私道を回避するとコストがかかりすぎる (つまり、私道を避けるための迂回路が長すぎる) 場合は、私道の回避が解析で容認され、車両は私道を通ることができます。
ネットワーク エレメントの優先
3 つめの規制属性は優先規制です。「規制」という名前とは矛盾しますが、優先規制ではネットワーク エレメントが解析に対してより適していると見なされるため、そのエレメントが結果に含まれる可能性が高くなります。危険物を運搬するトラックがあるとします。道路の中には、危険物の輸送が違法となる道路、容認されている道路、さらに、道路沿いで事故が発生しても緊急隊員の到着や事故拡大の抑制が最も容易であることから、危険物の輸送が奨励されている道路があります。これらのルールをモデリングするには、危険物の輸送が違法である道路には [規制の使用法] の値を [禁止] にして規制属性を設定し、危険物の輸送が奨励される道路には [規制の使用法] の値を [優先] にして別の規制属性を設定します。この結果、車両のルートは禁止された道路には決して設定されず、できるだけ優先道路に沿って設定されます。
階層
階層は、ネットワーク エレメントに割り当てられる順序またはランクです。道路ネットワークでは、道路を 3 つのクラス (またはそれ以上。生活道路、一般道路、幹線道路など) に分ける属性がソース フィーチャに設定されている場合があります。各ソース フィーチャのこの属性を使用して、ネットワーク データセットに階層属性を構築することができます。
階層属性ができたら、ネットワーク解析の実行時に使用するか、無視するかを選択できます。
階層を使用すると、大規模なネットワーク全体の解析にかかる時間が短縮されます。さらに、運転者が一般に高速道路を選択する様子のシミュレーションも行われます。レベルの高い道路を進む方が、レベルの低い道路よりも予測しやすく、容易であるためです。階層解析の短所は正確さに欠けることです。階層を無視することによって、解析の移動時間や移動距離をさらに短縮できる場合があります。