Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
使用する尺度の種類によっては、得られた値の解釈の仕方が大きな影響を受ける場合があります。20 キロメートルという距離は 10 キロメートルの 2 倍の距離であり、10 キログラムの重さは 30 キログラムの 3 分の 1 の重さです。しかし、レースで第 1 位の人間が第 3 位の人間の 3 倍頑張ったとは限らず、pH が 3 の土の酸性度は pH が 6 の土の半分ではありません。この考え方をさらに進めると、60 歳の人間はたしかに、30 歳の人間の 2 倍の年齢です。しかし、両者のうちで年齢が上の方の人間が若い方の人間の 2 倍の年齢になるのは、一生の間に一度しかありません。
数値に関するこの論点で重要なのは、すべての数値を同じ方法で扱うことができないという点です。ラスター データセットで使用する尺度の種類をよく理解しておくと、適切な演算および関数を使用することができ、予測可能な結果が得られます。尺度は、比、間隔、順序、および名義という 4 つの種類に分類できます。
Spatial Analyst では、値の処理または操作を実行した場合に、これらの 4 通りの尺度の種類を特に区別しません。比の値に対しては、ほとんどの数学演算を使用できます。しかし、間隔、順序値、および名義値に対して乗算、除算、平方根などの演算を実行しても、通常は意味のない結果になります。一方、間隔値や順序値に対して減算、加算、ブール型演算を実行すると、適切な結果が得られます。名義値を使用する場合は、ラスター データセット内およびラスター データセット間での属性の操作が非常に有効的であり、効率的です。
比
比尺度の値は、線形スケール上の固定ポイント 0 を基準とした相対値として派生します。この値に数学演算を適用すると、予測可能で意味のある結果が得られます。比尺度の例としては、年齢、距離、重量、体積などがあります。
間隔
日時、カレンダー年、摂氏温度のスケール、pH 値などはすべて、間隔尺度例です。これらの値は、線形目盛のスケール上でプロットされますが、時間や空間内で真のゼロ ポイントを基準とした相対値ではありません。真のゼロ ポイントが存在していないため、計測値同士を相対的に比較することができます。ただし、率および比率の判断には適していません。
順序
順序値は、順位を決定します。順序値は、1 位、2 位、3 位といった順位を示しますが、大きさや相対的な比率を示すものではありません。良好度、不良度、美的度、健康度、強度などを順序値で示すことはできません。たとえば、1 位の走者が 2 位の走者の 2 倍走ったとは限りません。1 位の走者が勝者であるということがわかるだけで、2 位の走者よりどれだけ速く走ったかを知ることはできません。
名義
この尺度に関連付けられている値は、各事象を区別するために使用します。この値によって、オブジェクトと関連付けられているグループ、クラス、メンバー、またはカテゴリを示す場合もあります。この値は、量ではなく質を表すものであり、固定ポイントや線形スケールとは無関係です。土地利用コードや土壌のタイプといった属性は、名義の値です。その他の名義値としては、郵便番号、電話番号などがあります。
不連続データと連続データの違い
各セルに代入する値の 2 番目の分類基準は、値が不連続データと連続データのどちらを表しているかという点です。
不連続データ
カテゴリ データと呼ばれることもある不連続データは、ほとんどの場合オブジェクトを表します。それらのオブジェクトは通常、クラス (土壌のタイプなど)、カテゴリ (土地利用形態など)、またはグループ (政党など) に属します。カテゴリ オブジェクトには、定義が可能で明確な境界があります。
不連続ラスター データセットの各セルには通常、整数値が関連付けられています。ほとんどの整数ラスター データセットは、その他の属性情報を格納するテーブルを 1 つ持つことができます。浮動小数点値は、不連続データを表す際に利用できますが、一般的ではありません。
不連続データは、順序値または名義値を表現するのに最適です。
連続データ
連続ラスター データセットまたはサーフェスは、浮動小数点値または整数値を持つラスターによって表現することができます (浮動小数点値を持つラスターは、浮動小数ラスター データセットと呼ばれます)。データセット内の各セルの値は、特定の尺度 (空港付近のさまざまな場所で計測するデシベル単位の騒音量など) 内で、固定ポイント (平均海面など)、コンパス方位、または特定の事象からの各場所の距離に基づいています。連続サーフェスの例としては、標高、傾斜方向、傾斜角、原子力発電所からの放射能レベル、塩湿地が内陸部に移動する際の塩湿地からの塩分濃度などがあります。
浮動小数点のラスター データセットには、テーブルが関連付けられていません。なぜなら、すべてではないにしろほとんどのセル値は一意の値であり、連続データという性質から属性を関連付けるというのことが考えられないからです。
連続データは、比の値および間隔値を表現するのに最適です。
不連続データと連続データを結合すると、多くの場合は意味のない結果になります。たとえば、土地利用形態 (不連続データ) と標高 (連続データ) を加算するような場合です。居住地という土地利用形態の値「4」を標高値 100 に加算すると、結果のラスター データセットでは 104 という無意味な値になります。