タッセルド キャップ (Kauth-Thomas) 変換は、さまざまな衛星センサー システムによって検出された植生現象と都市開発の変化を分析しマッピングするようにできています。データの分布を図示したときの形状から、タッセルド キャップ変換として知られています。ERIM (ミシガン環境研究所) の R.J. Kauth と G.S. Thomas によって 1976 年に開発されました。論文 (Kauth and Thomas, 1976) の中で彼らは、田畑におけるランドサット衛星の MSS (多重スペクトル走査計) データで見いだされたパターンに、作物のライフ サイクルの関数として理論的な解釈をしました。本質的に、作物が種から生育するにつれ、土壌色の近赤外が純増し、赤色反射率が減少します。
土壌色の変化の有用性は、作物の監視から植生の分析とマッピングへと拡大しました。そしてさまざまな用途、たとえば林業、工業植生の管理、エコシステムのマッピングと管理、炭素隔離や排出権の管理とモニターリング、都市開発などをサポートします。また、ランドサット MSS のサポートから、他の民間衛星システム、たとえばランドサット TM やランドサット ETM+、ランドサット 8、IKONOS、QuickBird、WorldView-2、RapidEye 高分解能マルチスペクトル センサーを含むサポートへと拡大しました。
タッセルド キャップ変換を使用する場合、次のようないくつかの利点があります。
- 植生や土壌そして人工物の変化を短期間あるいは長期間にわたり検出し、比較する解析的手法を提供します。
- ランドサット、IKONOS、QuickBird、WorldView-2、そして RapidEye の異なるセンサーからの衛星画像を使用して、土地の表面形状を直接比較する解析的手法を提供します。
- いくつかのマルチスペクトル バンドから 3 つの主成分 (ブライトネス、グリーンネス、そしてウェットネス (ランドサット MSS ではイエローネス)) へデータ量を削減します。
- 大気の影響や画像のノイズ成分を減らし、より正確な分析を可能にします。
リモート センシング分析では、バンド間の関係を調べるため、異なる組み合わせのマルチスペクトル バンドの比を求め、プロットするのは一般的です。タッセルド キャップ変換は主成分分析の特殊なケースで、画像データを新たな直交軸の座標系に変換します。ブライトネスと呼ばれる主軸は統計的に導かれ、すべてのスペクトル バンドの反射率の加重和として計算されます。また画像の最も変動する部分を示します。ブライトネスは露出した、または一部分が隠れた土壌、あるいは人工物や天然物、たとえばコンクリート、アスファルト、小石、岩の露出、その他の露出したエリアに関連づけられます。第一の成分に直交する、第二の成分であるグリーンネスは植生に関連づけられ、第三の成分であるウェットネスは第一と第二の成分に直交し、土壌中の水分、水やその他の水分に関連づけられます。ランドサット MSS では、第三の成分はウェットネスではなくイエローネスに関連づけられ、各種穀物などの収穫できる成熟した作物だけでなく、植生の老化も表します。それ以外の成分は、雲、もやや太陽光の入射角の違いといった画像ノイズや大気の影響を含んでいて、最初の 3 つの大きな成分から取り除かれています。タッセルド キャップ変換された画像の最初の 3 成分は、画像で利用できる意味ある情報のうち、97 パーセントを含んでいます。
関数の使用
この関数に対する入力はラスターです。この関数にはこれ以外のパラメーターはありません。なぜならすべての情報は入力のプロパティとキー メタデータ (バンド、データ型、センサー名) から取得されるからです。ランドサット MSS、ランドサット TM、ランドサット ETM+、IKONOS、QuickBird、WorldView-2、そして RapidEye センサーからの画像のみがサポートされます。この関数は、関連するラスター タイプを使用するときや、関連するラスター プロダクトを使用するときにモザイク データセットのアイテムに対して使用できます。
この関数を適用する前に、ストレッチ関数やパンシャープン関数といった、関数チェーンでピクセル値を変更する関数があってはなりません。多くの場合デフォルトで加えられることが多いので、ストレッチ関数を関数チェーンから除かなければいけない場合があります。ランドサット ETM+ は唯一の例外です。ランドサット ETM+ を使用するとき、反射率関数はタッセルド キャップ関数の前にある必要があります。
データが前処理されている場合、この関数は正しい結果を返しません。画像提供元からの生データを使うのが最も望ましいです。また、前処理済みの 8 ビット IKONOS、QuickBird、および WorldView-2 データは、ピクセル値が変更されているので、有効ではありません。
この関数の出力は、入力ラスターと同じデータ型とバンド総数になります。出力バンドはスペクトルの範囲ではなく主成分を表します。先に説明したように、最初の 3 つのバンドは、詳細な解析の一部として使うことや、ブライトネス、グリーンネスそしてウェットネスの情報を視覚化するために使うことができます。
例
次に、サンプル イメージの [タッセルド キャップ関数] の結果例を示します。
イメージ | 説明 |
---|---|
この画像はランドサット 5 TM シーンのものです。このシーンは 2008 年 2 月 11 日に、アメリカ合衆国アーカンサス州の上空から撮られたものです。 これは、ナチュラル カラーバンド合成です (RGB、バンド 321) | |
これは、タッセルド キャップ関数から得られた、初めの 3 つの結果の RGB 合成です。赤=ブライトネス、緑=グリーンネス、青=ウェットネス | |
これはブライトネスの結果で、低い値から高い値へ、黒から白の勾配で示したものです。 | |
これはグリーンネスの結果で、低い値から高い値へ、黒から緑の勾配で示したものです。 | |
これはウェットネスの結果で、低い値から高い値へ、黒から青の勾配で示したものです。 |
参照
1. Kauth, R.J. and Thomas, G.S. 1976, The Tasselled Cap—A Graphic Description of the Spectral-Temporal Development of Agricultural Crops as Seen by LANDSAT. LARS Symposia, paper 159.
2. Crist, E.P. and Cicone, R.C., 1984, A physically based transformation of Thematic Mapper data—The TM Tasseled Cap, IEEE Transactions on Geosciences and Remote Sensing, GE-22: 256–263.
3. Huang, C. et al, 2002, Derivation of a tasseled cap transformation based on Landsat 7 at-satellite reflectance. International Journal of Remote Sensing 23: 1741–1748.