ArcGIS 9.2 よりも前のバージョンでは、空間参照は低精度でした。旧バージョンでは座標は 31 ビットの整数座標でしたが、ArcGIS 9.2 以降では 53 ビットで高解像度の空間参照が作成および管理されます。低精度の空間参照では、ドメイン範囲と解像度値を指定しなければなりません。大きなドメイン範囲を設定できるのは、解像度値が低い場合に限られます。高い解像度を反映する値を設定すると、必然的に、UTM (Universal Transverse Mercator) や State Plane などの多くの投影座標系には小さすぎるほど、ドメインが小さくなることもありました。
高精度の空間参照では、解像度と座標系によってデータセットの範囲が定義されるため、ユーザーがドメインの範囲を定義する必要はありません。デフォルトの解像度である 0.0001 メートルはほとんどのデータに十分な精度であり、低精度の空間参照の場合とは異なり、範囲の制限はありません。したがって、高精度の空間参照では非常に高い解像度において十分な範囲のドメインを確保できるため、それらのバランスをとる必要はありません。
上記の利点から、ほとんどの場合、データを高精度に変換することが推奨されます。ただし、アップグレードしていないクライアントにデータを提供する必要がある、または既存の解像度に満足している場合は、データを高精度に変換する必要はありません。データはこれまでと同様に ArcGIS で使用することができ、引き続き、低精度の空間参照で新しいデータセットを作成することができます (ArcGIS 9.2 から実装された一部の新機能を利用するにはデータを高精度に変換する必要があります)。
低精度の空間参照から高精度への変換
パーソナル ジオデータベースのデータを高精度に変換する作業は、ジオデータベースのアップグレードと空間参照の更新の 2 つの手順で構成されます。
パーソナル ジオデータベースをアップグレードするには、カタログ ツリーで [ジオデータベース プロパティ] ダイアログ ボックスを開きます。[一般] タブをクリックし、[ジオデータベースのアップグレード] ボタンをクリックします。これにより、ジオデータベースのスキーマが更新されますが、既存のデータの空間参照は高精度に変換されません。このため、必要であれば、既存の低精度のフィーチャ データセット内に、低精度のフィーチャクラスを新規作成することができます。
既存のデータの空間参照を高精度に変換するには、[データ管理 ツール] ツールボックスの [データベース] ツールセットにある [空間参照の更新 (Upgrade Spatial Reference)] ジオプロセシング ツールを使用します。
このツールまたは他の方法による高精度への変換の詳細については、「高精度への移行」をご参照ください。
低精度の空間参照を持つデータの作成
ArcGIS 9.2 以降では、まだアップグレードされていない ArcGIS 9.2 以前のジオデータベースを使用して、引き続き低精度のデータセットを作成することができます。このジオデータベースでフィーチャクラスまたはフィーチャ データセットを新規作成する、またはこのジオデータベースにデータをインポートする場合、新しいデータは低精度の空間参照を持ちます。また、ArcGIS 9.2 以前のジオデータベースをアップグレードしたとしても、既存のフィーチャ データセットは空間参照をアップグレードするまで低精度のままです。このため、既存の低精度のフィーチャ データセット内に、低精度のフィーチャクラスを新規作成することができます。ジオデータベースを ArcGIS 9.2 以降で新規作成した場合、または ArcGIS 9.2 以降にアップグレードした場合、低精度のスタンドアロン フィーチャクラスまたはフィーチャ データセットを作成することはできません。
低精度の空間参照を作成する際には、ドメイン範囲と解像度値または精度値とのバランスをうまく保つ必要があります。データに低精度の空間参照を指定する方法については、「低精度の空間参照の解像度とドメインの選択」をご参照ください。