格子線と経緯線レイヤーは、高性能なカートグラフィックおよび印刷されたマップ製品に焦点を合わせた格子線、経緯線、および枠線機能を提供します。格子線と経緯線レイヤーは、データ フレームのプロパティである格子線に追加されるプロパティです。データ フレームのプロパティである格子線は動的で、移動やズームに応じて更新されますが、格子線と経緯線レイヤーは個別のマップ範囲のフィーチャクラスとして作成され、ジオデータベースに格納されます。動的に更新されることはありませんが、標準の編集ツールとシンボル プロパティを使って編集および変更することができます。格子線と経緯線レイヤーによって、データ フレームの格子線プロパティでは使用できない、座標ラベル、枠線、ゾーン ジャンクション、および格子線の目盛の書式設定オプションが追加されます。これらの追加プロパティにより、国防地図局および民間地図製作局、海図製作機関、公安および緊急対応機関の多くの仕様に合った格子線を作成することが可能になります。
格子線と経緯線レイヤーを使用する場合には、編集を行ったり、マップの印刷やエクスポートを実行したりする際に、正しい座標系を維持することが重要です。これは、地図作成者にとってはすでに常識的なことでしょう。
格子線定義ファイルと [格子線と経緯線レイヤーの作成 (Make Grids and Graticules Layer)] ジオプロセシング ツール
格子線と経緯線レイヤーは、[格子線と経緯線レイヤーの作成 (Make Grids and Graticules Layer)] ジオプロセシング ツール (ArcGIS Desktop Standard ライセンス レベル) と、仕様に含まれるすべての詳細情報を持つ格子線定義ファイルを使って生成されます。ファイルには、グリッド ラインの数、色、ライン ウェイトといった、各格子線の仕様プロパティが格納されています。定義テンプレートを適用すると、現在の縮尺、座標系、または 選択フィーチャの範囲 (対象エリア) に基づく仕様に従ってフィーチャが作成されます。[格子線と経緯線レイヤーの作成 (Make Grids and Graticules Layer)] ジオプロセシング ツールは、所定の範囲に基づいて座標系を計算しようとします。
格子線定義ファイル (テンプレート) は XML ベースで、目的の縮尺と座標系が含まれています。たとえば、生成される UTM 格子線が UTM ゾーン 16 内の範囲を対象としている場合、格子線レイヤーはその UTM ゾーンを使用して作成されます。デフォルトで使用可能なテンプレートのリストについては、下記をご参照ください。
格子線と経緯線レイヤーのコンポーネント
格子線と経緯線レイヤーは、ポイント、ライン、ポリゴン、およびアノテーション フィーチャクラスで構成されています。これらのフィーチャクラスは、図郭線、枠線、グリッド ライン、格子線の目盛、および座標ラベルなどの格子線の部分で構成されています。また、これらはフィーチャであるため、標準的な編集ツールを使って編集し、一般的なマスク ツールを使ってマスクすることができます。格子線と経緯線レイヤーのシンボルおよびラベルの仕様は、格子線定義ファイルから読み込まれ、格子線と経緯線レイヤーの作成時に適用されます。シンボルは、フィーチャクラスとともにリプレゼンテーションとして格納され、標準のシンボル プロパティ メニューを使って編集および変更できます。
これらのコンポーネントは、対応するフィーチャクラスにフィーチャとして保存されます。これらのフィーチャクラスは、ジオデータベース内の指定されたフィーチャ データセット内に保存されます。格子線の基本コンポーネントを格納するためのフィーチャクラスは 8 つあります。各フィーチャクラスは、それぞれが保持する格子線コンポーネントを識別するのに便利な、3 文字の接頭辞で名前が付けられています。これらのフィーチャクラス / コンポーネントは以下のとおりです。
- ANO_ - アノテーション フィーチャクラス
- EPT_ - エンドポイント フィーチャクラス
- GLN_ - グリッド ライン フィーチャクラス
- MSK_ - ポリゴン マスク フィーチャクラス
- CLP_ - 不規則な形状の対象エリアに使用される、ポリゴン クリップ フィーチャクラス
- PNT_ - ポイント フィーチャクラス
- SEG_ - 図郭線セグメント フィーチャクラス
- TKS_ - ライン目盛フィーチャクラス
これらのフィーチャクラスは、複数の格子線の情報を保持できます。9 つ目のフィーチャクラス (GRD_) には、マップ名や格子線タイプなどの構成情報が含まれ、格子線を構成する際に使用されます。
ポリゴン マスク フィーチャクラスは、格子線と経緯線レイヤーの一部として作成されます。このマスクは、図郭線の範囲を囲む外部リングを形成します。このリングは、座標ラベルに予約されているエリアのデータを隠す (マスクする) ために使用されます。データ フレームの格子線プロパティにより、データ フレームの外部に座標ラベルを配置することはできますが、格子線と経緯線レイヤーはフィーチャクラスを使用し、座標ラベルはアノテーション フィーチャを使用するため、座標ラベルはデータ フレーム内に含める必要があります。マスク フィーチャクラスにより、座標ラベルを地図の図郭線の範囲外にあるデータ上に重ねることが可能になります。また、多くの地形図の形状に使われる一般的な台形を含む、あらゆる形状を使用する範囲にラベルを付けることが可能になります。
次の図は、Topo_50K_WGS84_UTMZoneClipping 格子線定義ファイル (インストールに含まれ、「GridTemplate」フォルダーに存在) を使用して作成された、格子線と経緯線レイヤーのコンポーネントを示しています。
格子線と経緯線レイヤーをマップで操作する
格子線と経緯線レイヤーは、特定の縮尺と座標系のために作成されます。たとえば、1:100,000 の縮尺のマップに、1,000 メートル間隔の格子線を設計するとします。この場合、適切な縮尺によって各格子は 1 センチメートル四方になります。同じ格子線定義を 1:1,000,000 の縮尺のマップに使用すると、格子線の間隔が狭すぎて、マップには不適切になります。また、格子線の座標ラベルはアノテーション フィーチャクラスとして格納され、特定の基準縮尺を使って作成されます。縮尺を変更することにより、座標ラベルのサイズと位置の両方が変わります。
各データ フレームは、マップを表示するための座標系を持つ必要があります。これがマップの主な座標系となります。各データ フレームは、主な座標系を 1 つだけ持つことができます。ただし、格子線と経緯線レイヤーを作成して使用すると、同じデータ フレーム内に、測地基準を含む複数の座標系をさらに表示することができます。これらの追加の座標系は、補助座標系と呼ばれます。たとえば、主要な座標系が UTM ゾーン 14 であるマップに格子線レイヤーを作成し、隣接する UTM ゾーン 15 と米国州平面座標系を補助座標系として表示することができます。
いったん格子線を生成してから、データ フレームの座標系を変更すると、予期しない結果につながることがあります。格子線はフィーチャであり、空間的精度が高いため、UTM やメルカトルなどの円筒図法を使って作成された格子線を投影し、座標系を円錐図法や正積図法に変換すると、座標系の変換によってグリッド ラインが曲線になり、ゆがみます。格子線は生成時の図法に対する精度は保っていますが、直角ではなくなります。また、座標のアノテーションが投影されると、競合が発生し、座標ラベルの配置品質を損なう可能性があります。アノテーションは手動で移動する必要がある場合があります。
使用する格子線テンプレートや対象のエリアによっては、アノテーションが重複したり、データ フレームによってクリップされた状態で表示されたりする可能性があります。アノテーションが重複している場合には、編集セッションでアノテーションを移動することができます。編集するレイヤーは必ず選択可能にしてください。印刷レイアウトでデータ フレームのサイズを少し調整すると (幅や高さをわずかに増やすと)、クリップされたアノテーションの表示が削除されます。
デフォルトで使用可能な格子線テンプレート
ArcGIS には多数の格子線テンプレートが提供されており、ArcGIS のインストール ディレクトリ (\ArcGIS\Desktop<バージョン>\GridTemplates) に配置されています。ここには、汎用格子線フォーマットや、US National Grid、防衛用マップ、地図作成政府機関スタイルのマップなどの複数の標準格子線フォーマットが含まれています。
これらの格子線テンプレートを、簡単な説明とともに以下に示します。
- Calibrated_1500K_to_2250K_WGS84
World Geodetic System 1984 メルカトル図法に基づいた、1 度の経緯線と 100 キロメートルのグリッド ラインを持つ目盛付き枠線。1:1,500,000 ~ 1:2,250,000 の間の小さい縮尺のマップ用に設計されています。
- Quad_24K_NAD83
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、図郭線の外側に 1,000 メートルの目盛があり、経緯線はない地形の格子線。1:24,000 の中程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- Topo_50K_WGS84
WGS84 UTM 投影に基づいた、1,000 メートルのグリッド ラインを持つ、地形の格子線。1:50,000 の中程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- Topo_50K_WGS84_UTMZoneClipping
WGS84 UTM 投影に基づいた、1,000 メートルのグリッド ラインを持つ、地形の格子線。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:50,000 の中程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- Topo_250K_WGS84
WGS84 UTM 投影に基づいた、5 度の経緯線と 10,000 メートルのグリッド ラインを持つ、地形の格子線。1:250,000 の中程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_500_NAD83
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、10 メートルのグリッド ラインと 2 メートルの目盛を持つ、US National Grid。1:500 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_500_NAD83 _UTMZoneClipping
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、10 メートルのグリッド ラインと 2 メートルの目盛を持つ、US National Grid。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:500 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_500_YellowGridlines_NAD83
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、10 メートルの黄色のグリッド ラインと 2 メートルの目盛を持つ、US National Grid。1:500 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_500_YellowGridlines_NAD83_UTMZoneClipping
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、10 メートルの黄色のグリッド ラインと 2 メートルの目盛を持つ、US National Grid。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:500 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_1K_NAD83
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、50 メートルのグリッド ラインと 10 メートルの目盛を持つ、地形の格子線。1:1,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_1K_NAD83_UTMZoneClipping
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、50 メートルのグリッド ラインと 10 メートルの目盛を持つ、地形の格子線。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:1,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_50K_NAD83
NAD 1983 UTM 座標系に基づいた、1,000 メートルのグリッド ラインを持つ、US National Grid。1:50,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_50K_NAD83_UTMZoneClipping
NAD 1983 UTM 座標系に基づいた、1,000 メートルのグリッド ラインを持つ、US National Grid。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:50,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_500K_NAD83
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、10,000 メートルのグリッド ラインを持つ、US National Grid。1:500,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_500K_NAD83_UTMZoneClipping
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、10,000 メートルのグリッド ラインを持つ、US National Grid。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:500,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_25K_NAD83
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、1,000 メートルのグリッド ラインを持つ、US National Grid。1:25,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
- USNG_25K_NAD83_UTMZoneClipping
NAD 1983 UTM 投影に基づいた、1,000 メートルのグリッド ラインを持つ、US National Grid。1 つの UTM ゾーンと交わる、1:25,000 程度の縮尺のマップ用に設計されています。
格子線定義ファイルは、ArcGIS Production Mapping エクステンションから入手できる格子線デザイナーを使って作成または変更できます。格子線定義ファイルは共有が可能で、オンラインの Resource Center から追加の格子線フォーマットを入手することができます。