地理座標系の表面の形状とサイズは、球体または回転楕円体により定義されます。地球は、回転楕円体によって最適に表現されますが、数学上の計算を簡単にするために、球体として扱われることもあります。地球を球体と仮定するのは、小縮尺地図(1:5,000,000 より小さい)の場合には可能です。この縮尺では、球体と回転楕円体の違いは地図上で検出できません。しかし、大縮尺地図(縮尺が 1:1,000,000 以上)での精度を維持するためには、地球の形状を回転楕円体として表現する必要があります。これらの縮尺の間で、球体と回転楕円体のどちらを選択するかは、地図の目的とデータの精度によって決まります。
回転楕円体の定義
球体は円を基準にしており、回転楕円体(または楕円体)は楕円を基準にしています。
楕円の形状は 2 つの半径で定義されます。長い半径は長半径、短い半径は短半径と呼ばれます。
短半径のまわりに楕円を回転させると、回転楕円体ができます。回転楕円体は短回転楕円体とも呼ばれます。次の図は、回転楕円体の長半径と短半径を示しています。
回転楕円体は、長半径aと短半径b、扁平率で定義されます。扁平率は、2 つの軸間の長さの違いを分数または小数で表したものです。扁平率 f は次のように算出されます。
f = (a - b) / a
扁平率は小さな値なので、通常は 1/f を使用します。World Geodetic System of 1984(WGS 1984 または WGS84)の回転楕円体パラメータは次のとおりです。
a = 6378137.0 メートル、b = 6356752.31424 メートル、1/f = 298.257223563
扁平率の範囲は 0 ~ 1 です。扁平率の値 0 は、2 つの軸が等しいこと、つまり球体を意味します。地球の扁平率は、約 0.003353 です。扁平率のように回転楕円体の形状を表すもう 1 つの数は、離心率の 2 乗 e2 です。次のように表現されます。
正確な地図を作成するための異なる回転楕円体の定義
地球の表面の特徴と特有の不規則性をより正確に理解するために、測量作業が重ねられてきました。その結果、地球を表現するために多くの回転楕円体が定義されました。一般に、回転楕円体は、1 つの国や特定の地域に合うものが選択されます。ある地域に最適な回転楕円体が、必ずしも別の地域に合うものと同じであるとは限りません。つい最近まで、北米基準系では 1866 年に Clarke により決定された回転楕円体が使用されてきました。Clarke 1866 の回転楕円体の長半径は 6,378,206.4 メートル、短半径は 6,356,583.8 メートルです。
重力が一定でないことや地表面の特徴がさまざまであることから、地球は完全な球体でも完全な回転楕円体でもありません。衛星技術によって、たとえば南極は北極よりも赤道に近いといった、いくつかの楕円に関する偏差が明らかになりました。地上測量による古い回転楕円体は、衛星によって決定された回転楕円体に代わりつつあります。たとえば、北米に対する新しい標準回転楕円体は、測地基準系 1980(GRS 1980)で、その半径は 6,378,137.0 メートルと 6,356,752.31414 メートルです。GRS 1980 回転楕円体のパラメータは、1979 年に国際測地学・地球物理学連合によって設定されました。
座標系の回転楕円体を変更すると、すべてのフィーチャ座標値が変更されるので、多くの機関ではまだ新しい(より正確な)回転楕円体に切り替えていません。