Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
[ゾーンのジオメトリ (Zonal Geometry)] ツールは、ラスターに含まれる各ゾーンのジオメトリ (形状) に関する情報を返します。ゾーンは、ひと続きの単一エンティティであるとは限りません。分離した複数の領域 (リージョン) で構成されている場合もあります。
[ゾーンのジオメトリ (Zonal Geometry)] ツールでは次の 4 種類のジオメトリを計算できます。どの種類のジオメトリを計算するかは [ジオメトリ タイプ] パラメーターで指定します。
- 面積
各ゾーンの面積。
- 周長
各ゾーンの周長。
- 深さ
ゾーン内の周辺セルにおける最深ポイント。
- 重心
各ゾーンの重心。
[ゾーンのジオメトリをテーブルに出力 (Zonal Geometry as Table)] ツールはジオメトリのすべての計測値を算出しますが、出力ラスターではなくテーブルとして結果を返します。
ジオメトリ タイプが面積、周長、および幅の場合は、出力結果がマップ単位で表されます。ジオメトリ タイプが重心の場合は、長軸および短軸の出力値もマップ単位になります。
ゾーン データセットがフィーチャ データセットの場合、出力セル サイズの解像度に従って、内部でラスターに変換されます。
解析環境でセル サイズを変更すると、リサンプリングおよび累積の四捨五入のエラーにより、出力値が影響を受けることがあります。
面積
ゾーンの面積解析は、入力ラスターの各ゾーンの合計面積を求め、その結果を出力ラスターの対応するゾーンのセルに割り当てます。その際、「対象ゾーンを構成しているセルの数」x「現在のセル サイズ」によって面積が算出されます。
すべてのリージョンの面積が計算され、それらの計算結果が合計されるので最終的に 1 つの値のみが出力の対象ゾーンに割り当てられます。
面積はマップの面積単位で計測されます。
例
次の図は、入力ラスターに対し、[ジオメトリ タイプ] を [面積]、セルサイズを 1 に設定して [ゾーンのジオメトリ (Zonal Geometry)] ツールを実行した結果を示しています。
周長
ゾーンの周長解析は、入力ラスターの各ゾーンの周長を求め、出力ラスターの対象ゾーンの各セルにその値を割り当てます。その際、対象ゾーンの境界を構成するすべてのセルの長さを合計することによって、ゾーン全体の周長が計算されます。外部境界と内部境界 (アイランド) の両方が対象となります。
ゾーンが複数のリージョンで構成されている場合は、それぞれの周長が合計されます。したがって、最終的な 1 つの合計値のみが出力の対象ゾーンに割り当てられます。
周長値はマップの距離単位で計測されます。
例
次の図は、入力ラスターに対し、[ジオメトリ タイプ] を [周長] に設定して [ゾーンのジオメトリ (Zonal Geometry)] ツールを実行した結果を示しています。
深さ
ゾーンの幅解析は、入力ラスターの各ゾーンについて、周囲のセルから最も深いポイント (最も奥にあるポイント) を求めます。つまり、対象ゾーンの外側にあるセルを含めず、対象ゾーンに内接する最も大きい円の半径を求めることになります。
まず、ゾーンの最も外側のセルを特定します。内側に進むことにより、外側のセルの隣にあるセルが特定され、その内側という順序で、最も内側の (奥の) セルが特定されます。
内部のゾーンのセルの中心から、最も近い周囲のセル位置の最も近いエッジ (中心ではない) までの距離が計算されます。
ゾーンの外部境界 (外側エッジ)、または内部境界 (ゾーン内のアイランド) からの深さを計算することもできます。
ゾーン内部で、2 つのセルが水平または垂直に直接接している場合、その距離は「セル サイズ」x 1 となります。ゾーン内部で、2 つのセルが対角に接している場合、その距離は「セル サイズ」x約 1.41421 となります。ゾーンの境界で、ゾーン内部のセルがゾーン外部のセルに接している場合、使用する計算式は上記の 2 つと同じですが、ここでは 2 で除算します。内部セルから境界までの距離は累積されます。
ゾーン内のリージョンが接続していない場合、ゾーンの幅は、そのゾーン内にある不連続のリージョンすべてについて、最も奥のセルの値を返します。
ゾーンの 1 つ以上の境界線がラスターまたは解析ウィンドウの端に接している場合、計算時にその境界が無視されます。ラスターまたは解析ウィンドウの範囲内にあるセルについてのみ、幅が求められます。
ラスターまたは解析ウィンドウの範囲内にある NoData 値は、深さの計算対象となる有効なセルです。ただし、NoData セルには深さがありません。入力として NoData を持つセルは、出力でも NoData となります。
例
次の図は、入力ラスターに対し、[ジオメトリ タイプ] を [幅] に設定して [ゾーンのジオメトリ (Zonal Geometry)] ツールを実行した結果を示しています。
上記の例で、ゾーン 7 とゾーン -6 の境界が幅に影響を与えます。つまり、これら 2 つのゾーンはセル構成は同じですが、ゾーン 7 の幅は 1.5 セルであるのに対し、ゾーン 6 の幅はわずか 0.5 セルです (各セルがゾーンの外部セルになります)。
アプリケーション
ゾーンの幅解析により、特定のゾーン (森林など) の最も奥まった位置を求めることができます。
ゾーンの幅は、データのノイズであったり、解析に関係ないと思われる小さいゾーンや狭いゾーンを削除したりするときに役立ちます。このツールを実行した後、[条件] ツールセットや [抽出] ツールセットのツールを使用して、特定の値 (幅) より小さいゾーンを削除することができます。その他、[面積] および [周長] の出力、[ジェネラライズ] ツールセットの [境界のスムージング (Boundary Clean)]、[大多数フィルター (Majority Filter)]、[縮小 (Shrink)] もデータ クリーンアップ処理に役立ちます。
重心
ゾーンの重心解析は、各ゾーンの空間的形状の重心に楕円を作成することによって、そのゾーンのおおよそのジオメトリを求めます。各ゾーンの固有値と固有ベクターが計算されます。楕円の向きは、最初の固有ベクターの方向です。楕円の長辺と短辺の比は、それらの固有値の比と同じです。各楕円の面積は、ゾーンの面積と同じです。
すべてのゾーンについて重心が求められます。ゾーンの重心が配置される出力ラスターのセルには、そのゾーンの値が設定されます。一般に、出力ラスターにおける非 NoData セルの数は、入力ラスターのゾーン数と等しくなります。ただし、複数のゾーンの重心が同じ出力セルに含まれる場合、そのうちの最小ゾーン値がセルの値となります。
楕円
出力ラスターの属性テーブルには、各ゾーンの楕円体近似の形状を表す追加項目が含まれます。楕円の形状とサイズを定義するパラメーターは、長軸、短軸、および方向です。属性テーブルでは、Value 項目および Count 項目の後にこれらの項目が表示されます。各楕円の面積は、その楕円が割り当てられているゾーンの面積と同じです。
- MAJORAXIS
長軸の長さ。マップ単位で計測されます。
- MINORAXIS
短軸の長さ。マップ単位で計測されます。
- ORIENTATION
方向は、X 軸と楕円の主軸との間の角度として定義されます。値を 0 から 180 までの範囲の度数値で指定します。方向の角度値は、東 (3 時の位置) を始点 0 とし、長軸が垂直になる 90 度まで反時計回りに計測されます。ゾーンが 1 つのセルのみで構成されている場合、または複数のセルが 1 つの正方形ブロックを構成している場合は、楕円 (この場合は円) の方向が 90 度に設定されます。
すべてのゾーンを表す楕円のパラメーターを指定するには、正準相関分析を使用します。このメカニズムは一般に標準偏差楕円と呼ばれ、セルの中心の座標に基づいて分散が計算されます。詳しい計算方法については、このドキュメントの最後に記載されている参考文献をご参照ください。
例
次の図は、入力ラスターに対し、[ジオメトリ タイプ] を [重心] に設定して [ゾーンのジオメトリ (Zonal Geometry)] ツールを実行した結果を示しています。
参考文献
Ebdon, D., Statistics in Geography.Blackwell, 2001.