ArcMap でのネットワーク トレース
ネットワーク解析には、ネットワーク トレース、つまりトレースが含まれています。トレースという用語は、ここでは、ある手順に従って一連のネットワーク エレメントを構築することを意味します。トレースを、次のように考えることができます。つまり、ネットワークのマップの上部に透過表示を配置し、ネットワーク エレメントをすべてトレースして、その結果に含まれるネットワーク エレメントを透過表示に表示するということです。
ネットワークを操作する場合、トレースは、接続性に関係しています。ネットワーク エレメントは、それが何らかの方法でトレース結果に含まれる他のエレメントに接続されている場合にのみ、トレース結果に含めることができます。トレース結果とは、トレース操作によって検索された一連のネットワーク フィーチャのことです。
たとえば、ある河川ネットワークの特定のポイントより上流にあるすべてのフィーチャを検索するとします。その場合、河川ネットワークのマップ上に配置された透過表示を使用して、このポイントより上流にあるすべての支流をトレースできます。トレース後に透過表示上に描画されたものが、目的の結果です。
同様に、ArcMap でトレース操作を実行した場合、トレース結果には、一連のネットワーク エレメントが含まれます。ArcMap では、トレース結果をマップの上部に描画するか、選択にすることができます。
フラグとバリア
ArcMap では、フラグによってトレースの始点を定義します。たとえば、上流解析を実行する場合は、フラグを使用して上流解析を開始する位置を指定します。フラグは、エッジ沿いまたはジャンクション上であれば、どこでも配置可能です。トレース操作を実行すると、ArcMap は、フラグの下にあるエッジ フィーチャまたはジャンクション フィーチャを始点として使用します。それらのエッジまたはジャンクションに接続するネットワーク エレメントは、トレース結果に含める対象になると見なされます。
バリアは、それを越えてトレースを続行できないネットワーク内の場所を定義します。ネットワークの特定の部分のみをトレースする場合は、バリアを使用して、ネットワークのその部分を分離できます。フラグと同様に、バリアはエッジ沿いまたはジャンクション上であれば、どこでも配置可能です。トレース操作を実行すると、ArcMap は、バリアの下にあるネットワーク フィーチャを無効であるかのように扱います。そのため、それらのフィーチャを越えてトレースを続行できなくなります。
フィーチャとフィーチャ レイヤーの無効化
フィーチャの無効化は、特定の場所にバリアを作成するための、より永続的な手段です。たとえば、都市水道ネットワークにおいて、ある水道管が開通していたが道路工事によって閉められた場合、その水道管の部分には水が流れません。この水道管を表すネットワーク フィーチャを無効にすると、トレースはこのフィーチャで停止します。
レイヤー全体を無効にすることが必要な場合もあります。たとえば、配電ネットワークのスイッチ レイヤーを無効にし、ネットワークのあるポイントからトレースすることで、ネットワークからこのポイントを分離するために切る必要があるスイッチを見つけることができます。つまり、トレース操作が停止したフィーチャがそれに相当します。
ウェイト
エッジとジャンクションには、任意の数の ウェイト を関連付けることができます。ウェイトは、通常、エッジまたはジャンクションを通過する際のコストを表すのに使用されるネットワーク フィーチャのプロパティです。エッジのウェイトの例としては、エッジの長さが挙げられます。最短パス解析では、結果として得られるパスの長さを最短にしたい場合に、このウェイトを選択します。別の例としては、電力ネットワークのエッジを通過する際の抵抗が挙げられます。抵抗のウェイトを使用すると、最短パスは、抵抗が最小のパスになります。
ネットワークを構築するときに、ウェイトになるエッジ フィーチャクラスとジャンクション フィーチャクラスの属性を指定します。これらのウェイトを使用して、フィーチャをトレース操作の結果に含める際のコストを指定できます。ArcGIS に含まれるトレース タスクのうち、[パス解析]、[上流パス解析]、および [上流累積解析] のみが、トレースのコストの計算にウェイトを使用します。
これらのトレース タスクを使用してコストを計算するには、使用するウェイトを指定する必要があります。ジャンクション フィーチャの場合、1 つのウェイトが使用されます。エッジ フィーチャの場合、次の 2 つのウェイトを使用できます。1 つはエッジ フィーチャのデジタイズ方向に沿ったウェイト (From-To ウェイト)、もう 1 つはエッジ フィーチャのデジタイズ方向とは逆向きのウェイト (To-From ウェイト) です。エッジ フィーチャのデジタイズ方向は、フィーチャのシェープ ノードをジオデータベースに格納する際の順序を示しています。ある方向のエッジのトレースに、他の方向のエッジのトレースとは異なるコストを設定する場合、エッジの方向ごとに異なるウェイトを指定できます。
ウェイト フィルター
ウェイト フィルターを使用して、トレース可能な一連のネットワーク フィーチャを制限できます。ウェイト フィルター は、ウェイト値に基づいて、トレース可能なネットワーク フィーチャを指定します。ウェイト フィルターは、単純な SQL クエリに基づくネットワーク エレメントの選択の作成と同じ目的で提供されています。ただし、ウェイト フィルターを実行するほうが非常に高速です。
ウェイト フィルターを使用して、トレース可能なネットワーク フィーチャのウェイト値の有効範囲または無効範囲を指定します。フィーチャをトレース結果に含める際のコストを表すウェイトを使用する場合と同様に、ジャンクション フィーチャには 1 つウェイトが使用され、エッジ フィーチャには 2 つのウェイトを使用できます。
トレース対象フィーチャとトレースを停止するフィーチャ
[接続解析]、[下流解析]、[上流解析] のいずれかのトレース タスクを使用すると、トレース対象フィーチャまたはトレースを停止するフィーチャを取得できます。トレース対象フィーチャは、トレース操作によって実際にトレースされるフィーチャです。一方、トレースを停止するフィーチャは、それを越えてトレースを続行できないフィーチャです。トレースを停止するフィーチャは、次のとおりです。
- 無効なフィーチャ
- バリアが配置されたフィーチャ
- 他の 1 つのフィーチャのみに接続された (行き止まりの) トレース対象フィーチャ
- ウェイト フィルターによって除外されているフィーチャ
選択を使用したトレース タスクの変更
ArcMap では、トレース時に、主に次の 3 つの方法で選択を使用できます。
- [解析オプション] ダイアログ ボックスを使用して、ネットワーク内のすべてのフィーチャ、選択されたフィーチャのみ、未選択のフィーチャのみのいずれに対してトレース操作を実行するかを指定できます。選択されたフィーチャのみにトレースを実行するということは、未選択のフィーチャがバリアとして機能することを意味します。一方、未選択のフィーチャのみにトレースを実行するということは、選択されたフィーチャがバリアとして機能することを意味します。この方法で選択を使用することによって、トレース操作を実行して、その後の操作のための一連のバリアを生成できます。あるいは、トレース操作の実行対象となる一連のネットワーク フィーチャを生成するための選択クエリを作成できます。
- トレース操作を実行するときに選択されるレイヤーを指定できます。ArcMap の [選択] メニューから、選択できるレイヤーと選択できないレイヤーを指定できます。ArcMap は、トレース操作の結果を選択セットとして返すときに、[選択] メニューで指定された設定を使用して、どのフィーチャをトレース結果の選択セットに含めるかを判定します。
- 対話型選択方法 ([選択] メニューで設定) を使用して、結果として作成される選択セットについての動作を指定できます。新しい選択を作成すること、トレース操作の結果を現在の選択に追加すること、現在の選択からトレース操作の結果を選択すること、現在の選択からトレース操作の結果を削除することなどが行えます。
ArcMap の選択機能を使用することにより、ArcMap に含まれる簡単なトレース タスクを利用して、複雑に組み合わせたトレース操作を実行できます。
まとめ
ユーティリティ ネットワーク解析ツールバーを使用したトレース操作
[ユーティリティ ネットワーク解析] ツールバーを使用して、以下を解析できます。
- ネットワーク内の指定したポイントより上流にあるすべてのネットワーク エレメント (上流解析)
- ネットワーク内の指定したポイントより下流にあるすべてのネットワーク エレメント (下流解析)
- ネットワーク内の指定したポイントより上流にあるすべてのネットワーク エレメントの総コスト (上流累積解析)
- ネットワーク内のポイントより上流のパス (上流パス解析)
- ネットワーク内の一連のポイントより上流にある共通フィーチャ (共有上流解析)
- ネットワークを介して指定したポイントに接続するすべてのフィーチャ (接続解析)
- ネットワークを介して指定したポイントに接続していないすべてのフィーチャ (切断解析)
- ネットワーク内のポイント間に複数のパスを生成できるループ (ループ解析)
- ネットワーク内の 2 つのポイントの間のパス。検出されるパスは、ネットワークにループが含まれるかどうかによって、これらのポイント間の多数のパスのいずれか 1 つになることがあります (パス解析)。