Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
サーフェスの水文特性を算出するための重要な項目の 1 つは、ラスター内の各セルから流向を特定することです。これは、[流向ラスターの作成 (Flow Direction)] ツールで行います。
このツールは、サーフェスを入力データとし、各セルから流出する流れの方向を示すラスターを出力します。[出力降下率ラスター] オプションを選択した場合、複数セルの中心を結ぶパスの長さに対する、流向での各セルの標高の最大変化率を示す出力ラスターが作成され、% の単位で表されます。[エッジにあるセルはすべて外側に流出させる] オプションを選択した場合、サーフェス ラスターのエッジにあるセルはすべて、サーフェス ラスターから外側に流れます。
有効な出力方向は 8 つで、フローが移動する 8 個の隣接セルに対応します。この手法は一般的に 8 方向 (D8) フロー モデルと呼ばれ、Jenson と Domingue の文献 (1988) に記載されている手法に従います。
流向の計算
流向は、各セルからの降下傾斜が最も急激な (落差が最も大きい) 方向に決まります。これは、次式で計算されます。
maximum_drop = change_in_z-value / distance * 100
この距離は、セルの中心間で計算されます。したがって、セル サイズが 1 の場合、2 つの直交セルの距離は 1、2 つの対角セルの距離は 1.414 (√2) です。複数のセルへの降下傾斜が同じ値の場合は、最も大きい降下傾斜が検出されるまで、計算対象となる近傍範囲が拡大されます。
最大降下傾斜の方向が検出されると、出力セルにその方向を示す値が割り当てられます。
隣接するすべてのセル (近傍) が処理対象のセルよりも高い位置にある場合、それはノイズと見なされ、近傍の最低値に平滑化され、このセルに向かう流向を持ちます。ただし、1 セルのシンクがラスターの物理的なエッジの隣にあるか、その近傍に NoData のセルが 1 つ以上ある場合は、近傍の情報が不十分なため、平滑化されません。本当の 1 セルのシンクと見なすには、すべての近傍情報が提供されている必要があります。
2 つのセルのフローが互いに向き合っている場合、それらはシンクであり、流向方向は定まりません。デジタル標高モデル (DEM) から流向方向を取得する方法は、Jenson と Domingue の文献 (1988) に示されています。
シンクになっているセルを特定するには、[窪地の抽出 (Sink)] ツールを使用します。サーフェス上で流向の正確な表現をするデータを出力するには、流向ラスターを使用する前に、シンクを平滑化する必要があります。
参照
Greenlee, D. D. 1987. "Raster and Vector Processing for Scanned Linework." Photogrammetric Engineering and Remote Sensing 53 (10): 1383-1387.
Jenson, S. K., and J. O. Domingue. 1988. "Extracting Topographic Structure from Digital Elevation Data for Geographic Information System Analysis." Photogrammetric Engineering and Remote Sensing 54 (11): 1593–1600.