ArcMap 10.7 では、マッピング、ジオプロセシング、ArcGIS Network Analyst エクステンションについて新機能が導入されています。また、ArcMap 10.7 および 10.7.1 ではデータベースとジオデータベースのサポートについても変更が行われています。以下では、これらの新機能について説明します。
修正された不具合の詳細については、「10.7 で修正された問題点のリスト」および「10.7.1 で修正された問題点のリスト」をご参照ください。
ジオプロセシング (10.7.1)
ArcMap 10.7.1 では、ジオプロセシング ツールで新たに追加または改善された次の機能を使用できます。
3D Analyst ツールボックス
以下に、10.7.1 における 3D Analyst ツールボックスの新機能について説明します。
ラスター サーフェス ツールセット
- [コンター (Contour)] および [コンター リスト (Contour List)] ツールは、並列処理ファクター環境での複数コアによる処理をサポートするようになりました。
カートグラフィ ツールボックス
[ラインの単純化 (Simplify Line)] ツールと [ポリゴンの単純化 (Simplify Polygon)] ツールに [有効エリアの保持 (Visvalingam-Whyatt)] という新しい単純化アルゴリズムが導入されました。このアルゴリズムでは、各頂点に対する有効なエリアの三角形を識別し、これを参考にしながら頂点を削除することで、できる限り多くの特徴を保持しながらラインを単純化します。
マルチディメンション ツールボックス
- 出力 netCDF ファイルのサイズを削減するため、[ラスター → NetCDF (Raster to NetCDF)] ツールに新しいパラメーター [圧縮レベル] が追加されました。
Spatial Analyst ツールボックス
以下に、10.7.1 における Spatial Analyst ツールボックスの新機能について説明します。
距離ツールセット
- 新しい [逆ユークリッド方向 (Euclidean Back Direction)] ツールは、バリアを避けながら、最寄りのソースに戻る最短パスに沿った隣接セルへの方向を計算します。
- [ユークリッド アロケーション (Euclidean Allocation)]、[ユークリッド方向 (Euclidean Direction)]、および [ユークリッド距離 (Euclidean Distance)] ツールに、新しい 2 つのパラメーターが追加されました。これらのツールで、バリアの周囲の方向の計算がサポートされました。新しいパラメーターは、入力のバリアと出力の逆方向ラスターで構成されています。
- [コスト パス (ポリライン)] ツールは、ユークリッド ツールから出力された新しい逆方向ラスターを入力として使用するように拡張され、バリアの周囲にパスを作成できるようになりました。
近傍解析ツールセット
- [フォーカル統計 (Focal Statistics)] ツールに、新しい [パーセンタイル] の [統計情報の種類] が追加されました。このオプションを選択すると、新しいパラメーター [パーセンタイル値] が使用できます。これにより、計算するパーセンタイルを指定できます。値の範囲は 0 ~ 100 で、デフォルトは 90 です。[中央値] 統計オプションで、浮動小数点入力ラスターがサポートされました。精度を高めるため、出力は常に浮動小数点になります。
サーフェス ツールセット
- [コンター (Contour)] および [コンター リスト (Contour List)] ツールは、並列処理ファクター環境での複数コアによる処理をサポートするようになりました。
データ (10.7.1)
ArcMap 10.7.1 のデータ管理では次の機能変更が行われました。
データベースとジオデータベース
- Oracle のジオデータベースのログ ファイル テーブルで、Oracle グローバル一時テーブルが使用されるようになりました。[ジオデータベース ログ ファイル テーブルの構成 (Configure Geodatabase Log File Tables)] ジオプロセシング ツールで、Oracle のジオデータベースのログ ファイル構成が変更されなくなりました (10.7.1.2.4 以降のリリース)。
- ArcGIS 10.7.1 には PostgreSQL 11 のサポートも含まれています。PostgreSQL 11 データベースでジオデータベースを作成するか、ST_Geometry タイプをインストールするには、PostgreSQL から ST_Geometry ライブラリ ファイルの My Esri 11 バージョンをダウンロードします。
- 10.7.1.2.4 以降のリリースのジオデータベースでは、PostgreSQL 9.5.x と PostGIS 2.2 のサポートは終了しています。ジオデータベースを作成するかアップグレードする前に、データベースをサポートされているバージョンにアップグレードします。
- ArcGIS 10.7.1 は、IBM Netezza Data Warehouse Appliance をサポートする最後のリリースです。
ジオプロセシング (10.7)
ArcMap 10.7.1 では、ジオプロセシング ツールで新たに追加または改善された次の機能を使用できます。
3D Analyst
- [サーフェス差分 (Surface Difference)] ツールで、LAS データセットがサポートされるようになりました。
- [LAS の間引き (Thin LAS)]、[LAS タイルの作成 (Tile LAS)]、[LAS のカラー化 (Colorize LAS)]、[LAS データセット → ラスター (LAS Dataset To Raster)]、および [LAS データセットの統計情報 (LAS Dataset Statistics)] で利用できる進行状況レポートが改善されました。
- [LAS の建物分類 (Classify LAS Building)] で、写真測量の点群でサポートされる戻り値 0 のポイントがある場合、屋根のポイントに考慮されるようになりました。
- [LAS データセット → TIN (LAS Dataset To TIN)] では範囲オプションとしてクリップが優先されます。
- [シェープの内挿 (Interpolate Shape)] で、入力サーフェスがラスターの場合に最近隣内挿オプションが提供されるようになりました。
- [LAS の地表分類 (Classify LAS Ground)] ツールは、複数の処理境界がある場合のパフォーマンスが改善されています。
- ほとんどのポリゴンおよびポリラインの出力に関して、[コンター (Contour)] ツールのパフォーマンスが改善されました。
- LAS ファイルがネイティブにサポートされ、読み取り、データ変換やインポートを行うことなく、LIDAR データに簡単にアクセスできます。
新しい環境
- 新しい分析環境設定である [セル サイズ投影法] を、[ラスターの内挿] ツールセット、[数学関数] ツールセット、[再分類] ツールセット、および [サーフェス] ツールセットのツールの大部分で使用できます。この設定は、解析中にデータセットが投影された場合に出力ラスター セル サイズを算出する方法を決定します。デフォルトの方法 CONVERT_UNITS は、これまでのリリースで使用されていた方法と同じです。その上さらに PRESERVE_RESOLUTION と CENTER_OF_EXTENT という 2 つの方法を使用できるようになりました。
変換ツールボックス
新しい分析環境設定である [セル サイズ投影法] を、[ラスターから変換] ツールセットおよび [ラスターへ変換] ツールセットの複数のツールで使用できます。この設定は、解析中にデータセットが投影された場合に出力ラスター セル サイズを算出する方法を決定します。デフォルトの方法 CONVERT_UNITS は、これまでのリリースで使用されていた方法と同じです。その上さらに PRESERVE_RESOLUTION と CENTER_OF_EXTENT という 2 つの方法を使用できるようになりました。[ラスターから変換] ツールセットでは、ツールは、[ラスター → ASCII (Raster to ASCII)] および [ラスター → 浮動小数点ファイル (.flt) (Raster to Float)] です。[ラスターへ変換] ツールセットでは、ツールは、[フィーチャ → ラスター (Feature to Raster)]、[マルチパッチ → ラスター (Multipatch to Raster)]、[ポイント → ラスター (Point to Raster)]、[ポリライン → ラスター (Polyline to Raster)]、および [ポリゴン → ラスター (Polygon to Raster)] です。
マルチディメンション ツールボックス
- [ラスター → NetCDF (Raster to NetCDF)] ツールに新しいパラメーター [圧縮レベル] が追加されました。
Spatial Analyst ツールボックス
Spatial Analyst ツールボックスでは、以下の設定が新規追加および変更されました。
新しい環境
新しい分析環境設定 [セル サイズ投影法] を、複数の Spatial Analyst ツールで使用できます。この設定は、解析中にデータセットが投影された場合に出力ラスター セル サイズを算出する方法を決定します。デフォルトの方法 CONVERT_UNITS は、これまでのリリースで使用されていた方法と同じです。その上さらに PRESERVE_RESOLUTION と CENTER_OF_EXTENT という 2 つの方法を使用できるようになりました。この設定を使用できるかどうか判断するには、特定のツールでサポートされている環境のリストを確認してください。
距離ツールセット
- 並列処理ファクター環境は [ユークリッド距離] ツールでサポートされていません。
抽出ツールセット
- パフォーマンスを向上するために、[複数の抽出値 → ポイント (Extract Multi Values to Points)] ツール、[抽出値 → ポイント (Extract Values to Points)] ツール、および [サンプル (Sample)] ツールが再設計されました。これらのツールでは、内挿方法も改善されました。
- [サンプル (Sample)] ツールでは、多次元データのイメージ サービスがサポートされるようになりました。
水文解析ツールセット
- [流路距離ラスターの作成 (Flow Distance)] ツールは、複数のフロー パス上の流路距離の計算に使用される統計情報の種類を決定する新しいパラメーター [統計情報の種類] を含んでいます。
- 並列処理ファクター環境は [窪地の抽出 (Sink)] ツールでサポートされていません。
近傍解析ツールセット
- [フォーカル統計 (Focal Statistics)] ツールが、並列処理ファクター環境をサポートするようになりました。このツールは、出力ラスターの統計情報を計算するときに複数のプロセッサを使用して、パフォーマンスの向上を実現します。
セグメンテーションと分類ツールセット
- [ディープ ラーニング モデル → ECD (Deep Learning Model to ECD)] ツールは、このリリースでは非推奨になりました。
サーフェス ツールセット
- ほとんどのポリゴンおよびポリラインの出力に関して、[コンター (Contour)] ツールのパフォーマンスが改善されました。
マッピング (10.7)
ArcMap 10.7 では、次の 2 つの新しいマップ投影を使用できます。
- Equal Earth
Equal Earth 投影は、世界地図の正積擬円筒図法であり、Tom Patterson (アメリカ国立公園、退職者)、Bernhard Jenny (モナッシュ大学)、および Bojan Šavrič (Esri) によって共同で開発されました。
Equal Earth マップ投影はロビンソン図法から着想を得て開発されていますが、Equal Earth が各エリアの相対的サイズを維持するという点で異なっています。Equal Earth は、ゴール-ペータース図法の代替手段を提供するために作成されました。Equal Earth マップ投影では、大陸は魅力的な外観を有しており、大陸が地球上に表示されるのと同様の方法で形成されます。この投影法は、地球規模の現象をマッピングすること、または真の相対的サイズでエリアを必要とするその他の世界の主題地図に適しています。研究論文「Equal Earth マップ投影」をご参照ください。
- パース クインカンシャル
パース クインカンシャル マップ投影は、世界を正方形で表現します。この図法は、1879 年にチャールズ サンダース パースによって開発されました。彼の元の設計では、この図法は北極を中心にし、赤道をマップ内で回転された正方形として表示します。この図法は、赤道の 4 つの屈曲を除き、正角です。ArcMap でのこの図法の実装は、WGS 1984 などの楕円上で、その正角を適切に維持します。
正方形およびひし形という 2 つの向きがあります。[オプション] パラメーターを、正方形の向きの場合は 0 に設定し、ひし形の向きの場合は 1 に設定します。
データ (10.7)
ArcMap 10.7.1 のデータ管理では次の機能変更が行われました。
データベースとジオデータベース
- ArcGIS 10.7 では Oracle 18c がサポートされます。
- Oracle でユーザースキーマ ジオデータベースを作成できなくなりました。このリリースでは、既存のユーザースキーマ ジオデータベースを引き続き使用してアップグレードすることができますが、使用しているデータをスタンドアロン ジオデータベースに移動することを開始する必要があります。
- ArcGIS での Altibase データベースの使用は非推奨になりました。
- ジオデータベースを Microsoft SQL Server 2012 に作成することはできず、既存のジオデータベースが SQL Server 2012 データベースに存在している場合、そのジオデータベースをアップグレードすることもできません。ジオデータベースをアップグレードする前に、SQL Server をサポートされているリリースにアップグレードしてください。
エクステンション (10.7)
Network Analyst
- 「+」演算子および「-」演算子が、関数エバリュエーターに追加されました。ネットワーク データセットに対して関数エバリュエーターを設定するときに、これらの演算子を使用できます。
- ルート解析では、最適ルートを検索するためにストップの順番を並べ替える新しいアルゴリズムを使用します。これにより、ソリューション (ストップの最大数が 16 である問題の正しいソリューションを含む) の品質および大規模な問題の解析にかかる時間の両方が改善されます。
アクセシビリティに関するドキュメント (10.7)
操作の視覚モードおよびキーボード ナビゲーションに関するトピックがこのドキュメントの「基本操作」セクションに追加されました。